魚飲み

昨日可愛い後輩達が飲みに誘ってくれたので久し振りに居酒屋で飲んだ。その居酒屋がえらいおもろいところで、なんと店内に釣り堀があって客が釣った魚をその場で調理してくれる、殆どアミューズメントパーク的な店やった。「奈良 アミューズメント」で調べたら一番上に出てくるんちゃうかな。試しに皆もやってみて下さい。因みにいま俺がやると金魚ミュージアムが出てきた。いやたしかに魚やけど、釣って調理すな。

とにかくそんな楽しいことが出来るのに見過ごす手はない、と、俺たちはぞろぞろ釣り堀を囲んで糸を垂らしたは良いものの、(こんな品のない大学生ごときに食われてたまるか)と言わんばかりの抵抗をかまされ、3本釣り糸を破壊された。確かに直前の「枝豆一回鷲掴み」の時に店員の目を盗んで、マイケルジョーダンが両手でいったんかって量の枝豆を不正入手したり、綺麗に剥がせずにホッケの背骨を複雑骨折させたりしてたけど、そんなに抵抗することないやないか。なにやらこんな畜生風情にプライドを傷つけられた気がした俺は、貧乏学生の執念、最後の糸で「シマアジ」なる釣り堀の最高級魚を釣り上げてやった。高級魚だかなんだか知らんがお高く止まりやがって。貧乏学生、引いては人間様を舐めてるからそんなことになる。大体なんや、その不細工な顔は。俺がその顔に産まれたら自殺してるよ。シマアジって名前もダサいよね。魚顔にも程がある。あと顔がキモい。などと魚に対してマウントを取りまくってたが、なんぼ顔がキモくても高級魚、釣り上げた俺に向かって後輩ちゃん達が声を揃えて「ジンさんすごーい!」という賞賛を送ってくれた。俺は普段の素行が悪すぎて褒められることが無いからそんなに褒められたのが初めてで、嬉しさの余り釣り堀に飛び込んでシンクロナイズドスイミングをする一発ギャグをしたら皆笑い過ぎてうんこ漏らして死んだ。

しかし会計の段になって、1回生の分は奢ろうという話の元、俺の同期の4回生の奴らや、3回生の奴らが6000円5000円とか出してる中、俺は2000円払うと残金が「2円」になるというバグが起きてた。しかもその2000円のうち半分の1000円は、店に来る前に俺の余りの金のなさを不憫に思った後輩に託されたものなので、実質俺が払ったのは「1000円」だけである。周りがポンポン札束を出してる中、俺が震える手で「ごめん…こんだけしかない…」とくしゃくしゃの1000円札を手渡すと、落胆や失望や本気の哀れみなどが入り混じった瞳で「まじすか。」と言われ、俺の頭の中にはさっきシマアジを釣り上げた時の「ジンさんすごーい!」という歓声が虚しくこだましていた。

散々コケにしたシマアジは泣けるほど美味かったし、シンクロナイズドスイミングなんかしてないし、そもそも俺泳がれへんし、後輩に金払わせてるし、その後家に泊めてくれた友達の所持品を片っ端からケツの穴に入れて本気でダルがられるし、なんなんや俺は…。癒しが欲しい…。金魚ミュージアムにでも行こかな…、って、もう魚は懲り懲りだぁ〜〜ぃ!!!!!